INTERVIEW
海外駐在
レポート
~世界の種苗メーカー激戦国・トルコより~
日本から直航便で約13時間、距離にして約8500km離れたトルコ・アンタルヤ。この場所にタキイ種苗の価値を届けるべく、一人の社員が駐在しています。今回は、現地にいるからこそわかるトルコの現状や、海外だからこそ感じ取れたタキイ種苗の価値を社員本人にレポートしてもらいました。
PROFILE
角谷朗太 Lothar Sumiya
タキイトルコ出向 / 法学部 国際法務特修課程卒 / 2015年入社
2018年よりトルコの拠点に出向。現在はキュウリやスイカといった果菜類の開発・マーケティングに取り組み、現地スタッフや販売代理店とともに、新品種の試作計画・検定、市場調査を行っている。
トルコでのタキイ種苗
実は、トルコは農業が盛んな国。農産物の生産量が世界トップ5にランクインする品目も数多くあり、国内では、自給自足率100%を達成しています。そのため、種苗業にも大きな需要があることから、トルコにはさまざまな国の種苗メーカーが集まっています。一言に種苗メーカーといっても、国や会社によって得意な作物や商品化のプロセス、ビジネススタイルも大きく違うんです。例えば海外の種苗メーカーでは、より多くのタネを販売することを重視します。そのため、大きなマーケットを動かすことが可能です。一方、私たちタキイ種苗は品質重視。どちらのスタイルが優れているという話ではないのですが、知名度だけで見ると、欧米系のメーカーの方が断然上です。ただ、トルコでは日本に対してポジティブな印象が根付いているようで、「タキイ種苗は日本の会社です」と紹介すると、興味を持ってくださったり、好感を抱いてくださる方が多くいらっしゃいます。それが業績にも表れており、キュウリのシェアや販売品種の数は、私の着任以降確実に上がっています。今は台木の需要が多く、タキイ種苗への高い期待も感じています。
駐在する
ことのメリットとは?
2017年に現地の企業を買収して拠点をつくったのが、トルコへの本格的な進出のきっかけです。それまではオランダの子会社を通して、タマネギの種子を販売しているくらいだったのですが、「トルコのマーケットを開拓するぞ」とタキイ種苗が本腰を入れ始めたときに、駐在員に選ばれたのが私でした。進出当初は、苦難の連続でしたね。まず、こちらでは英語がほとんど通じません。今でこそ簡単なトルコ語であれば話せるようになりましたが、着任当初はコミュニケーションを取ることすらも大変でした。また、トルコは経済変動が大きく、種子の価格にも大きく影響するため、価格競争の厳しさも増しています。そんな厳しい環境で競争に打ち勝つためにも、駐在できたことは本当に良かったですね。以前も、出張でこちらに来ることはありましたが、多くて年に3〜4回だったため、現地の販売代理店等ともなかなか密にコミュニケーションが取れず、信用を獲得できないこともありましたが、今ではすっかり関係性ができビジネスも進めやすくなりました。もう一つ、駐在のメリットとしては、育種の様子を都度、自分の目で確認できるので流れを“線”で捉えられるようになったことですね。状況に合わせ、随時対策を打てるようになったことが、業績アップにも繋がっていると感じています。
現地だからこその“失敗”。
日本と環境が違うからこその失敗もあります。特に、品種化に向け、生産現場で試作するための種子を、適切なタイミングで届けられなかったことが印象に残っています。ある時、タイで採種したスイカ種子をトルコに輸送するにあたっての検疫や通関に手間取り、到着が遅れてしまったことがありました。結果、一年に一度しかない試作のチャンスを逃したことで、現地のブリーダーが「残念だ」と肩を落としていた姿を見て、ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。タキイ種苗に高い期待を寄せてくださっている現地のブリーダーや生産者の方々に応えるためにも、主体的に現地のことを学び、臨機応変に対応していかなればと決意したできごとでした。
海外で叶えたい夢。
タキイ種苗は海外諸国で事業を展開していますが、そのなかでもトルコは間違いなく大きな伸びしろがある市場だと感じています。現在、タマネギやキュウリ、スイカにおいての知名度は少しずつ増えていますが、他の品種でもシェアを増やしていきたいと考えています。先日、桃太郎トマトを現地の方に試食してもらったのですが、「これはおいしい!」と好評でした。このように少しずつでもタキイ種苗の商品の良さ、品質の高さを知ってもらい、「タキイ種苗は良い品種をつくる会社だ」とトルコ中で認識されるようになりたいですね。そのために私ができることは、とにかく能動的に考え、動き、販売代理店の担当者や生産者など、一人でも多くの人と繋がり、タキイ種苗の品種や台木を試してもらうこと。トルコは競合他社がひしめく、戦場です。このマーケットをどこまで切り拓けるか。不安もありますが、未来のことを考えると、ワクワクが止まりません。いつか、トルコ中にタキイ種苗の品種を広め、それを足掛かりに海外でもっと稼げる会社にしていきたいです。