COLUMN
トマトと
ストレスの関係性
「現代社会ではストレスとの付き合い方が重要である」とよく言われます。これから社会人としての第一歩を踏み出そうとしている皆さんにとっても、これは決してひとごとではありません。ストレスをどう解消するか。さまざまなメディアでいろいろな方法が掲載されていますが、私たちからもひとつご提案を。タキイ種苗のトマトが、ストレスの軽減や高めの血圧を下げる可能性があるのです。
富永 直樹 / Naoki Tominaga
- 研究農場 生理機能研究グループ
- 理工学研究科 応用生物化学専攻/2011年入社
立役者は、「GABA」。
今から数年前でしょうか。GABAという成分を含んだチョコレートが「ストレス軽減に効果的」という理由で、ちょっとしたブームになったことがありました。実はこれ、科学的にも証明されていることなんです。GABAはストレスの軽減や高めの血圧を下げる効果がある成分。このGABAは、トマトにも含まれており、タキイ種苗では、この機能に着目して、近年“血圧が気になる方に”と表示をしたトマト品種を販売し始めました。これは、機能性野菜“ファイトリッチ”シリーズを国内で唯一展開している私たちだからできることです。
機能性を表示することの価値を実感したのは、この高めの血圧を下げるという表示をしたトマトを販売したことがきっかけです。それまでは「トマトは体にいい」というイメージのみで購入していた消費者から「この血圧が下がるトマト、いつ再入荷するんですか?」と、小売店に問い合わせが入ることも。このこともあり、私たちは機能性野菜の需要や可能性を実感することができました。 高めの血圧を下げるという効果を表示するには、申請書を作成して消費者庁に提出する必要があります。機能性表示食品であることを記載できる制度自体は存在していたのですが、認可の基準が非常に厳しく、さまざまな調整について苦労が絶えませんでした。しかし、そのときに得たノウハウが、その後の品種開発や商品販売の際にも大いに役立っています。今では、ストレス軽減効果を謳ったトマトを生産、販売する生産者も増えており、タキイ種苗は栽培方法の指導や届け出のサポートなどを積極的に行なっています。
機能性野菜は、
可能性に満ちあふれている。
ストレスの軽減や高めの血圧を下げる効果が期待されるトマトが含まれる私たちの機能性野菜“ファイトリッチ”は、人々の食事や健康に大きく貢献する可能性を持っています。さまざまな成分に特徴を持たせて機能を表示できるようになれば、消費者がより的確な選択をできるようになるのです。食が細くなっている高齢の方々にとっては、少量でも必要な成分を充分に摂取できる食品として認識してもらえるかもしれません。もしかしたら、将来はサプリメントの代わりまで果たすようになる可能性もあるのです。
そのためには、おいしさと機能面の双方を両立させ、伝えたい人に向けて明確に発信することが重要です。野菜は、どのような消費者をターゲットにして販売するかといった点は、これまでは考えられてきませんでした。しかし、GABAを含むトマトの販売は「ターゲットを意識した野菜の販売」という観点で先駆けになるはずです。研究の観点では、可能性が高い成分を狙うのか、含まれる成分を全体的に底上げするのか、的確に判断して進めることが重要になるはずです。
機能性野菜の歴史はまだ浅く、これからも進化・発展が期待されています。私たちのファイトリッチシリーズも、ラインナップをさらに増やしていきたいと考えています。ただ、何の研究をするにしても、大切なのは、生産者と消費者にとって価値のあるものをつくること。GABAによって高めの血圧を下げたりストレスを軽減するトマトも、消費者がそれを食べることで、トマトのおいしさを楽しめるだけでなく、体調の改善も促進できる。生産者としても、消費量の増加に伴って経営がより潤う。「体にいいものをつくっている」というプライドを持って農業と向き合えるようになる。ファイトリッチシリーズのなかにある数々のトマトは、そんな社会づくりの礎になるのかもしれません。