vol.07

REPORT

3つの心を通わせ、
タネのDNAを研究する。

青池 仁美 / Hitomi Aoike
研究農場 育種技術研究グループ チーフ
理工学部卒 / 2000年入社
入社のきっかけ
子どもの頃から植物と触れ合うのが大好きで、就職活動でも「好きなことなら絶対に頑張れる」と思い、タキイ種苗へ。入社の決め手は、タキイ研究農場を見学したとき、社員が前向きに働く姿を見て「植物が好きな人に悪い人はいない」という仮説が確信に変わったこと。
入社後の流れ
1年目は、基礎研究グループ(現・先端基盤研究グループ)で育種のスピードアップや効率化を図る技術開発に従事。以来18年間、各種研究に取り組む。2018年より、応用研究グループに異動。従来の育種法に代わる新しい育種技術の研究などを進める。現在は、女性マネジャーと研究員、双方のポジションを担いながら日々、業務に邁進中。
私の仕事

研究員としての私。

まず、研究員として。葉根菜や花卉類について、「こんな品種をつくりたい」というブリーダーの要望や自らの発案を効率よく実現できるよう、目標形質の評価法やDNAマーカーによる選抜法を開発します。DNAマーカーとは、その目標形質の目印となるようなDNA塩基配列の違いです。実例として、耐病性の高いトマトをつくるプロジェクトに携わったときのことを紹介しますね。研究を重ねた末に、耐病性に連鎖したDNAマーカーは完成し、高精度な耐病性選抜が可能となりました。でも、なぜか、カタチが崩れたトマトも増えてしまって。ブリーダーと一緒に、研究を重ねました。膨大な量のタネを撒き、育てて、ゲノム情報と照合すること3~4年。とうとう、形質の悪化を招く遺伝子座を特定できたんです。その遺伝子の働きを抑制する遺伝子を持たせて、見事、問題は解決。品種化にもたどり着き、売上も着実に伸びています。

私の仕事

マネジャーとしての私。

研究グループで、“育種”の名前が付くのは私たちのグループのみ。その名が示す通り、グループのミッションは、基礎研究で得られた知見をいかに育種に実装するか。私たち研究グループが生み出す研究成果は、いわば植物のディティール。洋服に例えると、生地やボタン、ファスナーなどのパーツのようなものです。お客様に洋服として着ていただくためには、そこにデザインや着心地などの価値を加えて洋服につくり上げるプロセスが必要です。野菜や花卉類の品種化でも、ブリーダーがひとつの植物、ひとつの品種にまとめあげるプロセスが必要です。そこで、私たちの育種技術研究グループの出番。私たちは研究グループが有する種々の技術を駆使し、ブリーダーと連携しながら育種プロセスで生じる障壁をひとつひとつ乗り越えていきます。オリジナリティーの高い品種として知財化できた事例、従来の半分の年月で品種化できた事例もあり、これらは私たちのグループにとって、大きな成果になりましたね。

開発環境の進化

ひとつのチームとなり、育種を加速させる。

以前は、私たち研究員とブリーダーというふたつのポジションで育種を進めていたのですが、研究開発から品種化までの工程がなかなか繋がらず、「死の谷」が生じることもしばしば。そこで、2016年、育種現場の課題と研究グループの技術を繋いで、新しいシナジーを創出する役割を担う「プレブリーディング」という組織が誕生したのです。2020年には、研究員とブリーダーがひとつの空間で働けるよう、建物自体の改築も実現。活発な意見交換ができるようになると、確かに研究がよりスムーズに進み、より新たな成果を見込めるようになってきました。何より、会社がよりよい育種を目指して新しい組織を設立し、建物まで手を加えてくれたことに感謝です。「会社の資源を有効に使って、理想の品種を現実の品種にしたい」と思います。

Point item
研究施設のリニューアルにあたり、設計面でもさまざまな意見を採用していただきました。お気に入りは、このL字カウンター。 ブリーダーの方が気軽に研究員とコミュニケーションが取れるよう考え、このような形にしてもらったんです。