vol.23

INTERVIEW

花の美しさを
進化させる。

タキイ種苗が世の中に出荷しているタネは、野菜だけではありません。花も事業の柱のひとつであり、なかでも“サンリッチひまわり”は、世界中で愛されているシリーズです。“ひまわり”とひとことに言ってもいろいろな種類があることをご存知でしょうか?ここでは、そんな“サンリッチひまわり”や花の魅力をお伝えします。

PROFILE

池口英明 / 1999年入社
入社後より花の育種を担当。2001年に和歌山県にある研究農場印南試験地へ赴任しユーストマやリモニュームなどを担当。滋賀県のタキイ研究農場帰任後幅広い品目を経験し、ひまわりの育種をスタートする。

TOPIC 01

新概念のひまわりは、
新しい文化もつくった。

タキイ種苗がひまわりの育種をはじめたとき、世の中のひまわりに対するイメージは“家の軒先にも届くほど背の高い花”というものでした。そのダイナミックさはひまわりの持つ大きな魅力でした。そこで逆に、背の低い子ども目線で花の綺麗さや力強さを楽しむことができ、庭先でも膝丈くらいに生育する矮性品種があればおもしろいのではないか、と当時担当していたブリーダーが思いつき品種改良を進めました。その開発過程で開花が早く花型に優れた切花系統が発見され、そこから生まれてきたのがサンリッチひまわりでした。サンリッチひまわりの切花は、従来種にくらべコンパクトで扱いやすく花束やフラワーアレンジメント用の素材として世界に普及していきました。このように、ひまわりの使用用途はこれまでよりも大きく広がっていきました。

サンリッチオレンジにはいろいろな付加価値を与えました。たとえば、最短で55~60日という、開花するまでの期間の短さや、鑑賞価値の高い端正に整う美しい花弁、無花粉することで室内装飾や衣装などを汚さずどこでも使える利便性など。これらの価値を与えることで、外で大きく咲く花というひまわりのイメージをガラリと変え、新しい可能性を創出することができたのです。 そしてサンリッチひまわりの登場は、父の日の習慣も変えつつあります。実は今、カーネーションを母の日に贈る文化に続き、父の日にひまわりをプレゼントする文化が育ってきているのです。明るく元気に咲き誇るひまわりの力強さが、お父さんにいつまでも元気でいてほしいという想いに合うのかもしれません。 ひとつの品種が新しい文化をつくることができるなんて、すごいですよね。

TOPIC 02

色、大きさ、花の向き、
フィールド、全てが無限大。

今、サンリッチひまわりは、世界中でつくられています。しかも、色やカタチなどのバリエーションが年々増えているんです。最近では、クリーム&パープルローズというバイカラーの“サンリッチライチ”を2020年から発売し始めました。2021年には、オレンジ地にブラウンというバイカラーの“サンリッチマロン”が登場。どちらもすでに好評の声をたくさんいただいています。どちらの品種も約7年の月日を要して開発したのですが、実は最初は花弁の色が薄かったんです。そこから少しずつ品種改良して、今の色味に辿り着きました。 また、一般的なひまわりは、東に向いて花をつけますが、真上に空を向いて咲くサンリッチアップライトシリーズも開発しました。この特徴が結構話題になり、展示会に出展したときには出席者から大きな注目を集めたんです。のちに、プロのフラワーアレンジメントデザイナーさんが「上を向くひまわりのおかげで、今までにないアレンジができるようになりました!」と、SNSで投稿されていることを偶然見かけたりもしました。“花の向きが変わる”というのは、小さなことかもしれませんが、ここまで美しさの幅や利用価値が広がるんだなと私自身も大きな驚きを覚えました。 そして実は、国によってひまわりの花は好まれる大きさが違うんです。たとえばオランダでは、直径15cmくらいの比較的大きなものが好まれます。これは、元来持っているひまわりの力強さなどへのリスペクトが根強く残っているからかもしれません。サンリッチひまわりは世界を視野に入れて開発できる商品だけに、いろいろな発想から品種をつくれるのがおもしろさのひとつですね。シンプルな花ですが、可能性は無限大。それが、サンリッチひまわりなんです。 花は決して生活必需品ではありません。しかし、花を見て美しいと思う心は暮らしを豊かにしてくれるはず。そんな美しさをもっと多くの人に手軽に届けられるよう、これからも花というものを進化させ続けていきたいですね。