クロストーク

CROSS TALK 03

私は営業として茨城県を担当しています。取り扱っているのは野菜や花の種をはじめ肥料、農薬、ビニールハウスのパイプに至るまで、タキイの全商品です。種苗店への販売活動と新規提案を行いながら、農協や農家さんを訪れて情報提供や情報収集をしています。

私は研究農場で主にトマトの品種開発に携わっていますが、途中4年間は九州支店の開発担当として、果菜類の産地推進を行っていました。

開発の仕事って説明が難しいよね。ブリーダーと営業のちょうど中間のようなイメージだけど。

簡単に言うと、「産地の課題を見出し、それに対応したタキイの品種を提案し、上手に栽培してもらえるようフォローする」仕事。日々接するのは農協、農家さんが中心ですが、スーパーや市場など流通段階にも足を運びます。

「産地への品種推進」が開発担当と営業担当に共通するミッションということだね。

そうですね。栽培講習会などで新品種を紹介したり、タキイ品種を導入していただいた農家さんのところに行って技術的なフォローをしたり。私は九州一円を担当していたので、各地の畑を毎日飛び回っていました。事務所にいるのは月曜日くらいだったかな。

私の場合、月曜日と金曜日は事務所でデスクワーク。火曜日から木曜日は茨城県へ出張するというのが典型的な1週間です。

スーパーに行くとたくさんの野菜が並んでいて、いつでも誰でも買うことができる。そんな当たり前の光景がもしなくなったとしたら…。そう思うと、この会社もこの仕事も責任は重い。

ええ。かなり重いですね。農家さんの経営もかかっていますから。

農家さんにはがんばって儲けてもらいたいし、そのためにも私たちがしっかり産地で活動しなければ。極端な話、農家さんにとって最善策であるならば、タキイの品種じゃなくて他社品種を使ってもらっても構わないという気持ちでいますよ。本当に。

僕も他社品種の特性の説明、結構得意です(笑)。農家さんからいろんなお話を伺ったうえで、「タキイの品種は向かないかもしれません」「他社のこの品種のほうが合うかもしれません」と正直に伝えます。たとえその時は会社の利益にならなくても、長いお付き合いのなかでの信頼関係の方が大切ですから。

私たちのミッションは確かに「産地への品種推進」ですが、品種だけで農家さんのお役に立てるわけではありません。営業の場合は、さまざまな資材や農薬や肥料など、総合的に農業生産における課題の解決策を提供できます。膨大な商品知識を身につけるのは大変ですが、そうしたことができるのは種苗メーカーの営業ならではだと考えています。

茨城県のある北関東も九州も日本有数の大産地を抱える地域。東京をはじめとする首都圏向けに出荷していることも共通している。農協や農家さんもお互いのことを結構気にしているんじゃないかな。

ある意味で産地同士は競合関係にあるので、「この間の台風の影響、関東の方はどうだったの?」とかよく聞かれます。九州にいたころも、関東を担当する開発の者とはかなり頻繁に連絡を取り合っていました。

タキイはそういった担当地域をまたいだ情報交換は密だと思いますね。

全国の産地の状況を把握していないととても通用しません。タキイの品種を使っていただくためにも、「役に立つ情報をどれだけ持っていけるか」という部分はとても重要です。

いかにフレッシュな情報を提供できるかだよね。ちなみに九州でいちばん注力してきた品種は何?やっぱりトマト?

トマトの「桃太郎ピース」でしょうね。TYLCV(トマト黄化葉巻病)には農家さんみんな困ってますからね。

茨城県でも「桃太郎ピース」は推進中です。耐病性だけでなく味と栽培性を兼ね備えた品種が待望されていたからね。他社に先駆けて新品種を投入できたのは大きいよね。

2020年の東京オリンピック開催が決定したとき、長野県を担当していました。長野は全国一の生産量を誇るレタス産地でタキイ品種のシェアも高い。ちょうどロメインレタスの「ロマリア」という新品種ができたので、長野で産地化できないかと思ったんですよ。ロメインレタスは半結球タイプでシーザーサラダなんかでよく使われ、海外ではたくさん消費されている。玉レタスより歯切れがよくて確かにサラダにするとおいしい。オリンピックが開催されれば海外からたくさんの方が来日するので、それを契機として国内初の産地化を仕掛けてみたいと考えたわけ。

実際に産地に話を持っていったんですか?

提案自体は「おもしろい」と仰っていただいて、「ロマリア」もいい品種だと認めてもらえたけど…。青果物の販売先が確保されていない状況で、従来とは大きくタイプの違う品種をつくるのはリスクが高いからね。営業だけでは難しい。

産地から出てくる青果物の販売先、いわゆる受け皿を開拓するのは開発の仕事。市場やスーパーに新品種をPRすることで産地化を促すことがきるのは開発の醍醐味のひとつですね。

中山くんは開発の仕事を経験した上で、育種に携わっているけれど、九州へ行く前と今でどんな変化があった?

ある農協さんで栽培暦に載せるトマトの指定品種の検討会議に呼ばれた時のことが忘れられません。農協の担当者や地元の種苗店といった関係者が集まって、膝をつき合わせて農家1件1件の畑の状態も話し合い、結局5時間かかりました。真剣に議論をされている光景を目の当たりにして「ひとつの品種を使っていただくということは、これだけたくさんの人たちの思いを背負うことなんだな」と気が引き締まりました。今でもそうですが、産地では勉強させてもらってばかりです。

こちらからの情報提供より、産地の方々から学ぶこと、教えていただくことの方が本当に多いよね。

私は自分が売りたい品種は、自宅の庭で必ずつくります。自分で育てることで商談や推進に説得力が出ますし、品種特性も育ててみれば明確に分かりますよ。後輩にも勧めています。

私は何事に対しても感受性を高く保つよう心がけています。神経質という意味ではないのですが(笑)、植物のちょっとした変化はもちろん、農家さんに教えていただいたことや営業部・開発部の担当者からの報告について、すぐに確認したり、対応したりするようにしています。その積み重ねが皆様に貢献できる品種育成に繋がると考えているからです。

そういう積み重ねから生まれる信頼関係は、仕事をする上でとても大切だよね。

挑戦したいことで言うと、最近はオランダのような最先端技術を取り入れた環境制御型の農業や、運輸や流通など他分野の企業による農業参入が盛んです。そうした新しい技術や動きにも対応できる人材になりたい。清野さんはどうですか?

茨城県内にはいろいろな品目の産地がありますが、ホウレンソウやコマツナあたりはこれまで十分な品種推進ができていないように感じています。提案の仕方次第で産地に食い込んでいけると思っているので、粘り強く取り組んでいきたいですね。そして、挑戦したいことではないのですが、若い世代にもっと農業や野菜に興味を持ってもらいたいですね。農業というと後継者不足や高齢化といった暗いイメージが先行するのですが、茨城県では海外の大規模農場のようにビジネスという観点で農業を広く展開する農家さんもおられ、収益もしっかり上がっています。そうした元気な生産者の動向や中山くんの話にあった農業の新しい流れに目を向けてもらえればうれしいですね。

国内営業

清野 諭史
関東支店
1999年入社
農学部 農業経済学科卒

緑化飼料課、北海道支店を経て、本社の中部支店で岐阜県・愛知県・三重県・長野県の営業を歴任。岐阜県担当時代には、「タキイのホウレンソウが1株もなかった」飛騨高山エリアにおいて、ホウレンソウのシェア獲得に成功。2014年より関東支店勤務となり、現在は大産地を数多く抱える茨城県を担当する。

育種

中山 健治
研究農場
2005年入社
生物圏科学研究科
海洋生物資源化学専攻修了

大学院では海藻をはじめとする海洋生物の有効成分や機能性を研究。サンプル収集などフィールドワーク漬けの日々の中で試験管を振っているより外を走り回っているほうが性に合うと気づき、ものづくりへの興味もあってタキイに入社。約7年間、研究農場でミニトマトの品種開発に携わった後、出身地でもある福岡に異動。九州支店の開発担当として各地の畑を駆け巡る。2016年より研究農場へ戻り、現在は生産者から直に聞いて回った声をもとに、トマトの品種開発を行っている。